神経学的疾患および神経発達障害を伴う小児と若年成人におけるインフルエンザのリスクとその対応 - ベムのメモ帳Z
■[知的障害]神経学的疾患および神経発達障害を伴う小児と若年成人におけるインフルエンザのリスクとその対応
インフルエンザの流行シーズンも終盤を迎えてしまって季節遅れなのですが、自分自身が感染してしまったのをきっかけにエントリしておきます。日本でもしばしば高齢者施設におけるインフルエンザの蔓延についてニュースになりますが、今回ご紹介するのは米国の神経学的疾患・神経発達障害の入所施設での出来事です。たとえば特別支援学校にも重症心身障害児が在籍しています。特別支援学校内におけるインフルエンザの流行は一般の学校よりも深刻な事態に陥るリスクが高いといえるのかもしれません。ですからせめてワクチンだけでも家族全員毎年打っておこうと思うわけです。それでも残念ながら今年もまた感染してしまいましたが・・・
米疾病予防管理センター(CDC)は今年1月6日にリリースした罹患率・死亡率週報(MMWR)において、昨年2月にオハイオ州のある神経学的疾患者および神経発達障害者の入所施設におけるインフルエンザの発生についてレポートを掲載しています。
■Severe Influenza Among Children and Young Adults with Neurologic and Neurodevelopmental Conditions ― Ohio, 2011
財団法人国際医学情報センターによる抄訳がありましたのでそこから引用。
■MMWR抄録60(51&52)神経学的疾患および神経発達障害を伴う小児と若年成人における重度のインフルエンザ−オハイオ、2011年 他-財団法人国際医学情報センター
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神経障害や神経発達障害を有する小児は、季節性インフルエンザの罹患時に重症化や合併症発症(死亡を含む)のリスクが高い。2011年4月、Ohio Department of HealthとCDCは神経障害/神経発達障害を有する小児および若年成人が入所している施設で2011年2月に発生したインフルエンザのアウトブレイクを調査した。この報告は、このアウトブレイク中に重度インフルエンザを発症した13例の特徴と臨床経過(2例)を調査結果に基づいてまとめたものである。アウトブレイクでは施設入所者130例(2〜41歳)中76例が呼吸器疾患を急性発症し、うち13例(14〜33歳)が重度のインフルエンザであった(確定7例、疑い6例)。これら重度インフルエンザの13例全例が重度の神経障害および神経発達障害を有していた(有病率:脳性麻痺100%、知的障害100%、てんかん92%、脊柱側彎症77%など)。また全例が、2010年10月〜11月に2010-11年季節性インフルエンザワクチンを接種していた。発症時の臨床徴候は発熱が最も多く(92%)、退院時診断/ 死因は呼吸不全が最も多かった(54%)。8例(62%)にはオセルタミビル治療を行った(4例は発症後48時間以内に治療開始)。13例中10例が入院し、7例が死亡した。一部の入所者では、基礎疾患が早期診断や治療を妨げ、疾患の重症化に関与している可能性があった。長期ケア施設などの入所者で呼吸器症状がみられた場合には、インフルエンザの迅速な検査、早期の積極的な抗ウイルス薬治療(理想的には発症後48時間以内、診断確定を待たずに開始)、施設入所者に全員に対する抗ウイルス薬による化学的予防が重要である
入所者130人(2〜41歳)中、76人が呼吸器疾患を急性発症、うち13人(14〜33歳)が重度のインフルエンザで13人全員が知的障害を伴う脳性麻痺(日本で言うところのいわゆる重症心身障害に該当するのかなと)、一人を除いた12人がてんかんを持っていた。13人中10人が入院し7人が死亡。全員前年の10月〜11月にワクチンを摂取していたと。
本件についてCDCでは以下のようにまとめています。
What is already known on this topic?
この件に関して既に知られていたことは?
Children and young adults with neurologic and neurodevelopmental conditions have increased risk for severe illness and complications from seasonal influenza, including death.
神経学的疾患や神経発達障害を有する小児や若年成人は季節性インフルエンザによる重症疾患や合併症(死亡を含む)に対するリスクが高い。
チェサピーク、バージニア州の頭痛の医師
What is added by this report?
この報告によって付け加えられるものは?
This report documents severe influenza-related illness resulting in 10 hospitalizations and seven deaths among 130 persons in a residential facility for persons with neurologic and neurodevelopmental conditions. For some of these residents, underlying medical conditions might have hindered early diagnosis and treatment and contributed to the severity of illness.
この報告は神経学的疾患や神経発達障害の人々のための入所施設における重度のインフルエンザに関連する疾患が130人中10例の入院と7例の死亡という結果に終わったことを記録している。これらの入居者の一部にとって、基礎疾患が早期診断と治療の妨げになり、疾患を重度化させた可能性がある。
What are the implications for public health practice?
公衆衛生活動に対する影響は?
Clinicians should be alert to possible influenza among children and young adults with neurologic and neurodevelopmental conditions, especially during influenza season. Prompt testing and early empiric antiviral treatment in residents with respiratory symptoms in residential or long-term care facilities is important. Influenza prevention efforts should include vaccination of residents, health-care personnel, and others who might transmit influenza to residents, use of infection control precautions, and appropriate use of antiviral medications.
臨床医は特にインフルエンザシーズン中、神経学的疾患や神経発達障害の小児や若年成人におけるインフルエンザの可能性に警戒すべきである。入所ないし長期療養施設において呼吸器症状のある入居者への検査促進や早期の経験的抗ウィルス剤療法が重要である。インフルエンザ予防対策には入居者、介護者、そして入居者へインフルエンザを感染させる可能性のあるその他の人々への予防接種、感染対策予防措置の使用、抗ウィルス剤の適切な使用が含まれるべきである。
以下にもこの記事の紹介がありました。厚生労働相検疫所が医療関係者向けに発信している海外情報みたいです。ここまで書いてきておいてなんですが、こちらの方が分かりやすいです。
■FORTH|最新ニュース|2012年|オハイオ州での神経学的疾患や神経発達障害のある若年者における重症インフルエンザ
「編集ノート」の部分から引用します。これはCDCのリリースした本文ではないです。日本人の専門家が解説したものかと思われます。
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今回の流行で神経学的疾患や神経発達障害のある13人の重症インフルエンザ患者は、本来なら早期に抗インフルエンザウイルス剤で治療を受けることができたはずです。8人が抗ウイルス剤の治療を受けましたが、4症例のみ、発症から48時間以内にオセルタミビルが開始されました。ノイラミニダーゼ阻害剤での治療は発症から48時間以内に開始されるのが最もよいとされます;しかし、最近のデータ調査によりますと、発症後48時間以降に開始されても治療により、インフルエンザ関連合併症やリスクの高い患者や重症患者での死亡を防御する助けになることが示唆されています(4)。この報告書の中の13症例は、神経学的疾患や神経発達障害のある人のインフルエンザについて2つの重要な考察を強調しています:1)早期診断早期� �療の勧め、2)このような集団では重症化する高いリスクがあるということ、です。
神経学的疾患や神経発達障害のある人では、医学的状態の基準値からの変動がごくわずかであったり、症状について効果的な問診がとれなかったりするので、主治医はこのような患者でのインフルエンザ診断を積極的に行うべきです。神経学的疾患や神経発達障害のある患者では同時に筋異状や重度の側弯症のような障害による呼吸機能の障害が存在するかもしれません。そのため肺分泌物を喀出しにくく、二次的な下気道感染症のリスクが増大するかもしれません(1,5)。このような患者の主治医はインフルエンザシーズン中、可能性のある所見や症状について注意し、インフルエンザが疑われたら早期に積極的な抗ウイルス剤治療を開始すべ� �です。インフルエンザは非特異的呼吸器感染症様症状なので、根拠があれば経験的な抗ウイルス剤と抗生剤の混合療法を考慮すべきです。抗インフルエンザウイルス剤使用で悪心、嘔吐、めまい、鼻汁・鼻閉、咳そう、下痢、頭痛、いくつかの行動異常などの副作用がありました;しかしこれらはまれであり、抗ウイルス剤での治療はそれでも、特にこのようなハイリスク集団では、推奨されます。
13人の重症患者は全員が2010-11インフルエンザシーズン用に推奨されたワクチンを接種されたと報告されています。ワクチン接種はインフルエンザ予防と、合併症の予防に最適な方法ではありますが(4,5)、その効果はワクチン株の一致性とワクチン接種を受けた人の年齢と健康状態に依存します。2010-11インフルエンザシーズンの暫定的なデータでは、インフルエンザワクチンは全年齢層をあわせて約60%の効果で、分離された全インフルエンザウイルスがワクチン株(CDC、非公開データ2011)とよく一致していました。しかし、インフルエンザワクチンの効果は免疫低下状態の人や医学的基礎疾患のある人ではかなり低くなります(6,7)。インフルエンザは施設内で入所者やスタッフの中で急速に拡が� ��ことができますが、流行は通常あまり起こりません。医療従事者のワクチン接種は長期療養所入所者のインフルエンザと関連死亡を減少させることになります(8,9)。神経学的疾患や神経発達障害のある人では合併症のリスクが高く、ワクチン接種で完全に防ぐことはできないので、このような施設ではワクチン接種はインフルエンザ予防の大きな取り組みの中の一部分と考えるべきでしょう。この取り組みには長期療養所入所者、介護者、その他入所者にインフルエンザを伝播する可能性のある人々へのワクチン接種も含めるべきです。この取り組みには同時に感染予防策の使用、インフルエンザ疑い又は確定患者の治療に早期に抗インフルエンザウイルス剤治療を開始し、発生が判明したらすぐに他の入所者やスタッフへの感染を防ぐた めに抗ウイルス剤を使用することも含めるべきです(4)。
ワクチン保存の低温度は、ワクチンの至適効果に満たないことがあります。インフルエンザワクチンは35°〜46°F(2〜8℃)で保存すべきです。入所者がワクチン接種を受けた時期のワクチン保存温度のデータはありませんでしたが、調査の期間中の温度は至適温度よりかなり低温でした。ワクチンは製造されてから接種するまで適切に保存されるべきです。多くのワクチンは33°F(0.6℃)以下の温度で不活性化される可能性があります(10)。ワクチン保存の全ての冷蔵庫や冷凍庫の温度は1日に2回測定記録されるべきです。
この報告には少なくとも2つの制約があります。一つ目は、広義の症例定義が疑い患者に適応されており、症状のある入所者全員に診断学的検査が行われたわけではなかったことです;つまりインフルエンザ以外の呼吸器病原体が今回の流行に関与していたかもしれません。二つ目は、この施設の入所者は中等度の神経学的疾患や神経発達障害のある患者と比べ医学的にかなり虚弱であることです;それ故、この報告は神経学的疾患や神経発達障害のある患者全てまたは入所型療養所の全ての患者に当てはまるものではありません。
神経学的疾患や神経発達障害のある患者の主治医は早期の呼吸器疾患を疑わせる所見や症状に警戒し、特にインフルエンザシーズンには根拠があればすぐに� �インフルエンザウイルス剤での治療を開始すべきです。このような患者ではインフルエンザが疑われたらインフルエンザ迅速診断や経験的な抗ウイルス剤療法が推奨されます(4,5)。インフルエンザ流行時には、長期療養施設の感染しやすい入所者に対して抗ウイルス剤の予防投薬もまた推奨されます(4,5)。介護者はワクチン接種を受けるべきで、また主治医はこのような患者に対して、診断から生じる課題、重症インフルエンザ関連疾患の高リスクであることからワクチン接種を勧め続けるべきです。
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